カリラ

カエラじゃありません。カリナでもありません。
CAOL ILAと書いてカリラと読みます、こいつ。
スコットランドは西の果て、北大西洋に浮かぶIsle of Islay、アイラ島の地酒です。お金がない昨今なのですが、ちょっと手を伸ばして買うてみました。店で飲むよりは俄然安い。アルコール度数60度をストレートで飲むと世界が変わります。まじめな話、変わります。




シングルモルトと初めて出会ったのは19歳の冬のこと。(もう時効です・・・許してください)初めて口にしたのはラフロイグという当時の僕からしてみれば、とってもクレイジーな飲み物でした。カリラちゃんの仲間です。もっとも飲みにくい類の種族にビギナーで挑戦してしまったので、その先は言わずもがなの酒びたり人生です。

翌年にはスコットランドを一人で旅するまでにハマったワタシ。10年以上たった今でも、ピートの効いたスコッツ西海岸の地酒を大好物にしております。




エジンバラで想定外のホテルロックアウトに遭い、仕方ないからグラスゴーに行こうとしたら電車を乗り間違えてあわてて降りた隣町のリンリスゴーで宿を探し、見つからずに仕方ないから野宿しようとしたけど3月のあまりの寒さに30分でリタイアしてエジンバラに戻ってインフォメーションに泣きついて、改めてグラスゴーの安宿を紹介してもらってそれから鈍行で1時間ちょっとだったんだと思うけど数時間に感じる車窓から体験。でも外は真っ暗で人っ子ひとりはおろか、羊っ子一匹見えず。途中セルティックのサポーターが絶叫する車内に戦々恐々としながらグラスゴーの駅を出て、それから10数ブロックだったのだと思うけどそのときは数百キロに感じた道のりをほうほうの体でインド人経営のホテルにたどり着いたときのあのかぐわしいスパイスの香りやら、深夜まで玄関を開けてずっと待っていてくれたホテルのおっちゃんの「大変だったな、今日はゆっくり眠りなさい」という暖かい言葉とか、いろいろな若気の至りが思い起こされる不思議な飲み物でもあります。

スコットランドの田舎町に行くと、きっと僕が彼らの目にする初めての(は言いすぎだけど何人目かの)日本人でありアジア人だったりする世界が本当に待っています。中華料理はおろか、南アジア料理屋すら一軒もない町や村がいくつもあります。ところがそんな田舎町にも必ず一本道の目貫通りはあって、そこには必ずパブの一軒は鎮座しています。押すよりも前から軋みそうな重い扉を開けて中に入ると、昼間から赤黒い顔をしたおっさんたちがグラスを片手に口角から泡沫を飛ばしてくっちゃべっている景色にぶつかるわけです(これは田舎のみならず、ですが)。そんな場所では、東洋人はものすごーく珍しいから(誤解を恐れずに言えば、たとえば日本の山奥の観光地でもない村に突然ひげ面のアラブ人が登場するようなインパクトなんだと思う)、トイレに行くふりをして代わる代わる近づいてきて、ウィンクしたり、肩をこつんって小突いたりして関心をアピールしてくるのです。でもしゃべってる言葉がぜんぜんわかんないのでビビっていると、グラスがすすすーっとカウンターを滑ってくるのです。

とりあえず飲め、と。

ゲール語は結局まったく理解しませんが、その酒をおらが村の地酒として心から愛しているということと、その場のその時間を心から楽しんでいることだけはわかるので、それでいい、ということになります。さすがに親が心配すると思って今まで黙っていましたが、何度か泥酔して泊まっていた宿まで帰れずに「強制ホームステイ」したこともあったりなかったり・・・。そんなこんなでしたが、一度も持ち物や金品がなくなったことがありませんでした。そんなところでスコッツマンの尊厳とかそういうものを語るのはヒロイックかもしれないけど、僕がスコットランドが大好きな理由のひとつです。自分からは決して「おもてなし」なんて言わないところ。


週明けからマレーシア。
イスラーム圏での(酒を介さない)ローカリゼーションをそろそろ本気で習得したい今日この頃です。

コメント

このブログの人気の投稿

桜と物語

読書記録 当たり前が当たり前でなくなること

ラッキーに感謝