TAHITI紀行2

コペンハーゲンで開催されていたCOP15の結末を受けて、温暖化による海面上昇で沈みゆく島嶼国の代表のやるせない表情がニュース番組で盛んに映し出されていました。今に始まったことではなく、前々から言われていることではありますが、ツバルやパラオといった太平洋の独立国は毎年メートル単位の水位上昇により「国土がなくなる」現実に立たされているそうです。仏領ポリネシアではタヒチ島などの枢要な島はみな大きな島で、すぐにどうこうという危機感はないのかもしれませんが、それでも100以上も島があるのですから中には沈没に瀕した有人島があるかもしれません。制限重量一杯の荷物を抱え、大きな体を小さな飛行機の座席に押し込んで、何度も乗り継ぎをしながら渡っていく先の島に住んでいるのであろう人びとと実際にまみえた後では、なんともこの世界規模の会議の行く末も違ったものに見えてくるから不思議です。実際に見ないと想像力が湧かないのでは人間失格ですが、実際に見るのと見ないのとでは大きな違いがあるのも事実です。リゾート地に行ったつもりが、いつものくせで考え事です。

エアタヒチは、前回も少し書きましたが、仏領ポリネシアの域内にある島のうち空港設備がある47の島を結ぶ路線を毎日平均130便運行している航空会社です。所有する機材は全部で(たった)12機。

http://www.airtahiti.aero/articles.php?id=745

これと全く同じ記事が機内誌の記事として掲載されていたものを、離島との往復の間に読んでいました。他の乗客は当然窓の外の景色を見ています。私は悪いくせで考え事が始まったので、碧い海そっちのけで読みふけります。

「晴れている日と雨の日で搭載可能な乗客数が変わる」
「滑走路の端の椰子の木を一本切ると(筆者注:滑走路への進入角度が変わって揚力とか空気抵抗の関係が変わるから?)可能積載数が120㎞増える」
「照明のある滑走路は47路線中10しかないので日没までが離発着の勝負!」
・・・・

実に涙ぐましい経営努力に関する記事の数々です。

日本にも離島へのフライトサービスを提供している会社はRACとかORCとかいくつかあります。きっとどこの離島フライトも、離発着回数が多くて機材の整備が大変、赤字運行、悪天候への対処と悩みは似ているのだと思いますが、機内誌やウェブサイトに堂々と書いているのがとてもユニークです。気になってRACとORCのウェブサイトも見てみましたが、そんな苦労話はどこにも書いてありませんでした。打ち明け話も売りにしてしまうメンタリティがなんとも僕は好きです。しかも文中でちゃっかりオペレーション責任者の学歴(トゥールーズ:エアバスの本拠地があるフランス本土の都市ですね、の航空大学校と訳せばいいのかENAC卒)まで出して、セーフティーファーストをさりげなくアピールしているところあたり、したたかです。フランス人の心に響くセンテンスなのでしょうか・・・。

・・・そう。仏領ポリネシアにいてものすごく感じること。
そこはフランスなのです。言葉はフランス語(とタヒチ語。たいてい仏語は皆話せる。英語はかなり個人差あり)、食事などのカルチャーも当然フランスでバケットやチーズがものすごく旨い。そして流れる空気も、感覚もやはりフランスなのです。景色は碧い海に白い砂浜で、歩いているおっさんやおばさんはポリネシアン。つまり視覚的な景色はポリネシアンなのに、流れる空気はフランス。そんな感じ、うまく伝わるでしょうか。

なぜ水没しそうなツバルやパラオは独立国になって、ポリネシアの島々はそうしなかったのか。歴史の勉強が必要でしょうが、結果的に彼らはフランス領であり続けることを選択しています。それは「大国」フランスの一部であった方が経済的なバックアップもあるでしょうし、欧州へパスポートがつながっているというアドバンテージは当然ありますので、インセンティブにはなり得ます。しかしかつて同じように欧州各国や米国の植民地、信託統治領であったツバルやパラオは同様の環境があったとしてなぜ独立の道を歩み、仏領ポリネシアはそうならなかったのか。ウィキペディアを読むとなにやらそれらしいことが書いてあったりしますが、どうにも中途半端なので気になるならちゃんと勉強しろということですね。

というわけで備忘録的に検索した論文をペーストしておきます。
もう少し経ってまだ気になっていたら読もうかと思います。

http://www.jstor.org/stable/656575?seq=1

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