JKSK

18:33海浜幕張発の快速に飛び乗っても新宿に着くのは19:40。

田舎勤務を憂いながら駆け付けたのはJKSK月例会@クリナップ西新宿
ショールームです。

http://www.jksk.jp/j/jksk-report/index.html

JKSK(女子教育奨励会)とは、古くは明治の企業家渋沢栄一らが中心
となって「女性の社会参加と国際化」を目指して官民一体となって
設立したものが平成の世にリバイバルしたものだそうです。
主宰者(理事長)はこの方、木全ミツさん。労働省の幹部を務めて
国連公使に。退官後はボディショップジャパンの社長をなさった方。

http://www.jpf.go.jp/jfsc/topics/fr-0606-0075.html


国際文化会館で昨年行った「新渡戸塾」という「次世代のグローバル
リーダーを育てる」ことを目的にした私塾に参加させて頂いた時の
ご縁でご紹介頂き、先月からお邪魔しています。
新渡戸塾については、たぶん来週くらいに別途書きます。


JKSKの月例会は、理事長である木全ミツさんの手料理で始まります。
毎回招聘して貴重なお話をしてくださる講師のイメージに合わせて?
メニューが変わるそう。今回はけっこうピリ辛のものが多かった気が
します。といっても2回しか出ていないのですが、今日の講師は確かに
ピリ辛だったかも・・・。

講師の西田陽光さんは、東京財団の加藤秀樹さんが主宰する「構想
日本」という政策集団の広報責任者を務めていらっしゃる方。

西田さんのブログはコチラ。
http://blog.livedoor.jp/yohkoh2/

お話の主題は、財政難のわが国において、公共部門にかかる税金と
その使途となる事業を見直し、無駄をなくすために構想日本が
自治体や省庁、政党へ働きかけて、「事業仕分け」と呼ばれるプロ
ジェクトを行っている、その活動内容を紹介する、というものでした。

ポイントは以下の通り。
①国・地方に関わらず、行われている事業が公費投入するべきもの
なのかどうかを、当事者である自治体・省庁・政党とその事業を分析
出来る実務者・専門家、そして広く一般に開かれた形で点検し
クラリファイしていく。

②予算規模の大きな事業かつ効率性、事業の必要性等を勘案して疑問
がある事業を精査した上で「事業仕分け」を行う。公費支出に値せず
と判断される案件を総じて全体予算のおよそ10%ほどの財源が剰余と
なるので再投下が可能となる。

③行政、ある程度の専門知識を持ち客観的スタンスにある市民、
ファシリテーター(構想日本)の三者が善悪至上の感情論に流される
ことなく、建設的な議論を進めることで、当該事業仕分けを行う上で
前2者に物事を改善していくプロセスにおける協力関係が構築される。

④民主党の国会議員および官僚は基本的には生の現場を十分に経験して
おらず、結果的に個別具体的で効果が期待できる政策論争が出来ない。

⑤行財政改革や構造改革の議論の中で、とかく良くない面ばかりが
強調され、良い部分がほとんど報道されないというマスメディアの姿勢
は疑問。

⑥頭でっかちのエリートがトップに座る組織はダメになる。いろいろな
角度からアイディアを出し、取り組んでいくことの出来る実践型の実務家
が求められている。



感想としては総論もちろん賛成、各論個別に???の部分あり。

①行政の「無駄」をなくす、という効率化の議論自体は決して退潮
させてはならない。理念は十分理解できるし、必要なこと。

②ある程度ターゲットとすべき事業規模なり事業種別を絞り込む事は
必要である。一方で、特に地方自治体などでは一定規模以下の事業が大半
を占めるものであり、それが住民への行政サービス・生活インフラを支え
安心感を与える重要な部分ではないかと思われる。予算規模の大きなもの
に限定して事業仕分けを行った結果、全体の10%の予算が節減できると
するが、では残り9割の予算を執行して行った事業は適正だったということ
の裏返しである。9割適正というのは、民間的な視点からすれば極めて
高度な成果であろうことから、行政の行う事業それ自体の公共性、100点
を取って当たり前、というような「安心の前提」といったものがあるので
9割適正となるのか。では1割を削減するためにかけている労力と時間は
いったいどう評価するというのか。構想日本の活動そのものをプルーフ
する機能はあるのか、ないのか。

③中身の見えにくい行政の仕事ぶりを市民の目線に対して開放して行く
というコンセプトはとてもすばらしい。国家レベルの外交、通商交渉、
また国防、安全保障といった相手のある国家間交渉において守秘すべき
部分が守られてさえいれば、基本的に衆人環視の元にさらす努力は不断
であるべき。

④国会議員はいざしらず、省庁のキャリアには「意外と」立派な人が
多い。(役所によっても印象が違うはずだが。)そこで、彼らの役所の
「外」における実務能力・経験のなさ低さを嘆くのは簡単で、いっその
ことアメリカのように幹部は全てポリティカルアポインティーにして
政権が変わるたびに信託して政策決定をやらせるのはどうだ、という
意見もあったが、日本の官僚機構の構造、そして産業界、雇用の構造
もっといえば働き方の部分にまでこの問題は踏み込むことになる。
なぜならば、日本の政策を生み出すドライビングフォースである霞ヶ関
のキャリア達は基本的に「生まれながら」にキャリアで、「外」の
実務をドロを飲んでやり遂げる経験を積むことを求められない構造の
中に生きているからだ。それを、彼らにドロを飲ませながら特定の
政策分野について民的なセンスを大いに持ちつつ活躍できるように
するためには、官民の「人事交流」といったかわいらしいレベルでなく
真剣に民間を巻き込んだ「職業人」が還流できるような形にする必要
がある。国際公務員にも言えること。インとアウトがフレキシブルに
なれば、行ったり来たりの人材がいろいろなノウハウを各所に落とし
ながら、ポリティカルアポインティーとしても活躍できるはず。
それを支える本当の事務方は、その上への昇格はないけれども実務の
プロと明確に規定して処遇することを前提に制度改正をするべき。
これはいわゆる天下りの議論とはまったく土俵が違うものである。
もちろん「人事」の話だけには留まらず、「予算」の話に根本から
斬り込む覚悟がこの国にあるのかどうか。仕組みの話はナンセンスだと
言われましたが、「組織ができあがっている」中で「個人」がどれだけ
戦おうとしても、それはとても辛いこと。そもそも「国」というのが
「組織」なのです。

⑤ネガティブチェックになりがちな活動の過程で垣間見る、小耳に
挟むグッドガバナンスやベストプラクティス事例をどんどん情報共有
すべく発信した方が良い。ベストプラクティスの共有は、単に良いもの
を人まねするという意味では全くなく、類似のパターンで悩む他の
組織人が少しでもその悩みを早く確実に解決できるようにするほんの
小さなヒントになるという点では立派に効率化に貢献しているという
こと。活動を経て得られるリソースは全部使えば良い。無駄ゼロを
追及すること自体はなにも問題はないが、それよりもこの活動を行う
前から自助努力でガバナンスを向上させている例もたくさんあるはずで
そういった事例をどんどん発信していくことも立派な「提言」だと
思う。

⑥これは④にも通ずる。現場経験の蓄積がないマネージャーが役に立た
ないというのはどこの現場でも自明であり、今更の事柄でもない。


自分の目線でガバナンス、パブリックマネジメントに参画していくこと
は極めて重要なことで、市民社会の成熟には不可欠であるという点に
おいては文句なしで賛同をする一方で、では市民ひとりひとりがどう
したら参画するインセンティブを感じられるのか、といったインボルブ
メントのための方策をもっと詰めていく必要があるとつよく感じた。

講演後の雑談の中で、「素人の私たちには何ができるのかしら」と質問
していた方がいた。西田さんは「活動に加わってみて、そこでなにかを
感じて、自分の感じたままに問題点を明らかにしていくことが大事」と
おっしゃっていた。一方で、講演の中では「事業仕分け」に直接関わる
のは、その問題にある程度の専門性を持った人々と規定されているから
先の人はそんな質問をしたわけで。
「地方自治体の話ならば親近感を感じるし、生活者の目として見られる
けれど、国の仕事となると一般人の自分たちには遠い存在で・・・」と
いう続きの意見もいちいちごもっとも。

ふつうの「一市民」の目線で「参画」できるのは、やっぱり地方行政が
限界なんじゃないかなとふと思う。国の規模によりけりですが。全ての
国民が国家行政で取り扱う規模の話に精通できたらそんな国に行政は
必要ないわけで。

一部のアンテナの高い人たちだけが集って喧々諤々をやり、その他大勢
の人たちを「よくわかっていないまま報道するメディアにただ丸乗りして
いる」と批判するのは簡単だけれど・・・。

というようなことが消化不良でした。質問の仕方も悪かったかもしれないが
「聞く耳を持たない」スタンスもどうかしらとは思いました。

1億人の多数を占めるその他大勢の人たちが投じる票が国を左右する、
一方で少数派の「知識人」「有識者」は個では相対的に無力、とすれば、
後者の人々に出来ること、もといすべきことはひとつ。

ひとりでも多くの日本人を目覚めさせるために、すぐ隣の人から謙虚に話し
かけを続け、少しでも多くのことを知ってもらい、参画を促し続けること。

ではないかなと思います。根気が要る。とても。天下100年の計とは
よく言ったものです。

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